経営者にとって「資金繰りが苦しい」という状況は最大の悩みの一つです。
売上が好調でも資金ショートすれば事業継続が困難になります。
この記事では、中小企業診断士・公認会計士の山田智子先生に、資金繰り改善の具体的な方法を聞いていきます。
危機的状況から脱出し、健全な財務体質を築くヒントが見つかるでしょう。
登場人物紹介
佐藤直樹(42歳) – 製造業の中小企業経営者。創業5年目で従業員15名を抱える。コロナ禍からの回復途上で原材料高騰と大口取引先の発注減少により資金繰りが悪化。真面目で努力家だが、財務面の知識に不安がある。
山田智子(55歳) – 中小企業診断士・公認会計士。25年以上のキャリアを持ち、数百社の経営改善・事業再生に携わってきた。冷静かつ温かみのあるアドバイスに定評があり、危機的状況にある経営者の心の支えとなっている。
📊 資金繰り悪化の原因と現状把握
佐藤:山田先生、お忙しいところありがとうございます。
実は最近、会社の資金繰りが本当に厳しくて夜も眠れないんです。
山田:佐藤さん、お辛い状況ですね。
まずは具体的にどのような状況なのか教えていただけますか?
佐藤:はい。
創業5年目で、去年までは順調に売上も伸びていたんです。
でも最近、原材料費が急騰して、さらに大口取引先からの発注が減ってしまって…。
来月の給料支払いが厳しいかもしれないという状況なんです。😰
山田:なるほど、典型的な「売上減少」と「コスト増加」のダブルパンチですね。
まずは冷静に状況を把握することが大切です。
資金繰り表は作成されていますか?
佐藤:正直なところ、きちんとした資金繰り表は作っていないんです。
入金と支払いの予定はエクセルで管理していますが、あまり先の見通しまでは立てられていなくて…。
山田:それでは、まず現状を正確に把握するところから始めましょう。
これが資金繰り改善の第一歩です。
【用語解説】資金繰り表とは
将来の一定期間(通常3〜6ヶ月先まで)の現金の収入と支出を予測し、手元資金の残高を管理するための表です。いつ、いくら入金されるか、いつ、いくらの支払いがあるかを時系列で整理します。
佐藤:確かに現状をきちんと把握しないと対策も立てられませんよね。
山田:そうです。
それでは、資金繰りが悪化する典型的な原因をいくつか確認しておきましょう。
佐藤さんの会社に当てはまるものがあるか考えてみてください。
📝 資金繰り悪化の典型的な原因チェックリスト
✅ 売上の減少
- □ 主要取引先からの受注減
- □ 市場環境の変化
- □ 競合の台頭
- □ 季節変動への対応不足
✅ コストの増加
- □ 原材料費の高騰
- □ 人件費の増加
- □ 新規設備投資の負担
- □ 想定外の出費
✅ 資金の回収と支払いのバランス崩壊
- □ 売掛金の回収サイクルが長い
- □ 買掛金の支払いサイクルが短い
- □ 在庫過多による資金の滞留
- □ 不採算取引の放置
✅ 管理体制の問題
- □ 資金繰り計画の未作成
- □ 売上至上主義(利益率の軽視)
- □ コスト管理の甘さ
- □ 与信管理の不徹底
佐藤:(リストを見ながら)ほとんど当てはまってしまいます…。
特に原材料費の高騰と売掛金の回収が遅れがちなのが痛いです。
あと、正直なところ資金管理の体制が整っていないというのも大きな問題だと感じています。
山田:自己診断ができているのは素晴らしいことです。
問題が明確になれば、対策も立てやすくなります。
では、現状を踏まえて、緊急度の高い対策から順に見ていきましょう。
🚨 緊急時の資金調達策
佐藤:山田先生、まず一番気になるのは、この危機的状況をどう乗り切るかです。
来月の資金がショートしそうな状況でどうすればいいでしょうか?
山田:緊急時には「攻め」と「守り」の両方の戦略が必要ですね。
まずは「守り」、つまり今ある資金をどう守るかを考え、同時に「攻め」として新たな資金をどう調達するかを考えます。
緊急時の資金調達方法
佐藤:具体的にはどんな方法がありますか?
山田:いくつかの選択肢があります。
それぞれメリット・デメリットをお伝えしますね。
1️⃣ 金融機関からの短期借入
山田:まずは取引のある銀行に相談することです。
特に日本政策金融公庫や信用保証協会の制度融資は、民間銀行より条件が有利なケースが多いですよ。
佐藤:銀行には今の状況を話しづらいのですが…。
山田:多くの経営者がそう感じますが、実は銀行も取引先の倒産は望んでいません。
早めに相談し、誠実に状況を説明することが重要です。
★専門家のワンポイント★
銀行への相談時は、「なぜ資金繰りが悪化したのか」と「どう改善するのか」の2点を明確に説明しましょう。改善策のない相談は響きません。資金繰り表や経営改善計画を持参すると信頼度が増します。
2️⃣ ファクタリング(売掛金の早期現金化)
山田:売掛金を割り引いて早期に現金化する方法もあります。
手数料は高めですが、緊急時の資金調達には有効です。
佐藤:売掛金を売却するようなものですか?
山田:そうです。
ただし、手数料は10〜20%程度取られることもあるので、あくまで緊急手段として考えましょう。
また、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがあり、それぞれ特徴が異なります。
【用語解説】ファクタリングの種類
出典:ファクタリング賛否両論
2社間ファクタリング:売掛先に知られずに資金化できるが、手数料が高い
3社間ファクタリング:売掛先の承諾が必要だが、比較的手数料が低い
3️⃣ 資産の活用や売却
山田:遊休資産や不要な設備の売却も検討できます。
また、オフィスや工場のセールアンドリースバック(売却して賃借する方法)という選択肢もあります。
佐藤:確かに使っていない機械や車両がいくつかあります。
それを売却すれば少しは資金になりますね。
山田:ただし、事業に必要な資産の売却は慎重に判断してください。
目先の資金繰りは改善しても、将来の収益力が落ちてしまっては本末転倒です。
4️⃣ 公的支援制度の活用
山田:国や自治体の補助金、助成金も見逃せません。
特に現在は新型コロナウイルスからの回復支援や物価高対策など、様々な支援制度があります。
佐藤:そういった情報はどこで得られますか?
山田:中小企業庁のウェブサイトや、地元の商工会議所、よろず支援拠点などで最新情報を入手できます。
書類作成のサポートも受けられますよ。
💡 緊急資金調達のチェックポイント
- □ 金融機関への相談は準備を整えてから
- □ 資金調達にかかるコスト(金利・手数料)を比較
- □ 返済計画を必ず立てる
- □ 事業継続に必要な資産は極力手放さない
- □ 公的支援制度は最大限活用する
🔍 支払いの優先順位と交渉術
佐藤:資金調達と同時に、今ある資金をどう使うかも重要ですよね。
どの支払いを優先すべきでしょうか?
山田:そうですね、限られた資金の使い方は非常に重要です。
支払いには明確な優先順位をつけましょう。
支払いの優先順位
【最優先】人件費・税金・社会保険料
↓
【高優先】公共料金・通信費など事業継続に不可欠なもの
↓
【中優先】主要仕入先・外注先(事業継続に必須の取引先)
↓
【低優先】その他の仕入先・経費
↓
【最低優先】設備投資・返済可能な借入金
佐藤:税金や社会保険料が最優先なんですね。
仕入先への支払いよりも優先すべきなのでしょうか?
山田:はい、税金や社会保険料の滞納は延滞金や追徴金が発生するだけでなく、最悪の場合は差し押さえにもつながります。
また、従業員の給料も最優先です。
人材は会社の最大の資産ですから。
佐藤:なるほど。
ただ、仕入先への支払いが遅れると今後の取引に影響しそうで心配です。
山田:その懸念はもっともです。
だからこそ、支払いが遅れそうな場合は事前の交渉が重要になります。
🤝 取引先との交渉術
山田:支払いの延期や条件変更を交渉する際のポイントをお伝えします。
- 早めの相談
- 支払期日ギリギリや過ぎてからではなく、早めに状況を説明する
- 誠実さを示すことが最も重要
- 具体的な提案
- 「いつまでに、いくら支払える」という具体案を示す
- 分割払いの提案も効果的
- 互いのメリットを考える
- 取引継続が互いにとってメリットであることを伝える
- 将来的な取引拡大の可能性も示唆する
- 代替案の提示
- 現金支払いが難しければ、商品やサービスでの代替提案も検討
- 他の取引先の紹介など、非金銭的な価値提供も考える
★専門家のワンポイント★
交渉の際は「逃げない」「嘘をつかない」「約束を守る」の3原則を徹底しましょう。一度信頼を失うと取り戻すのは非常に困難です。支払い条件の変更は一時的なものであることを強調し、改善計画も併せて説明するとよいでしょう。
佐藤:確かに正直に話して理解してもらうのが一番ですね。
でも、銀行からの借入返済はどうすればいいでしょうか?
山田:銀行融資のリスケジュール(返済条件の変更)も選択肢の一つです。
特に中小企業については、金融円滑化法の終了後も、金融庁は柔軟な対応を金融機関に求めています。
【用語解説】リスケジュール(条件変更)
既存の借入金の返済条件(返済額や期間)を変更することです。例えば、毎月の返済額を減らして返済期間を延長するなどの方法があります。一時的な返済猶予を受ける場合もあります。
📉 短期的なコスト削減策
佐藤:資金調達と支払い交渉と並行して、支出を減らすことも必要ですよね。
どんなコスト削減ができるでしょうか?
山田:そうですね。
コスト削減は即効性がある対策です。
ただし、「闇雲な削減」ではなく「効果的な削減」を心がけましょう。
効果的なコスト削減の視点
- ムリ・ムダ・ムラの排除
- 過剰な在庫の削減
- 不要なサービスの解約
- 遊休設備・スペースの活用または処分
- 固定費の変動費化
- 自社保有から必要時のみのレンタル・リースへの切り替え
- 業務の一部アウトソーシング化
- エネルギーコストの削減
- 電力・ガス会社の見直し
- 照明のLED化
- 空調温度の適正化
- 通信費・IT費用の見直し
- 契約プランの最適化
- クラウドサービスへの移行
- 不要なソフトウェアライセンスの解約
- 業務効率化による人件費の最適化
- 残業削減
- 業務フローの見直し
- デジタル化・自動化の推進
佐藤:具体的にすぐできることはありますか?
山田:まずは「小さな積み重ね」から始めましょう。
例えば、以下のような項目は比較的すぐに実行できます。
📝 即効性のあるコスト削減チェックリスト
✅ オフィス・工場関連
- □ 照明・空調の使用ルール見直し
- □ コピー用紙の両面利用徹底
- □ 消耗品の集中購買・在庫管理
- □ 不要なスペースの返却・サブリース
✅ 通信・IT関連
- □ 固定電話と携帯電話の契約見直し
- □ インターネット回線の見直し
- □ クラウドストレージの整理
- □ 使用頻度の低いソフトウェアの解約
✅ 外部サービス関連
- □ 清掃・警備サービスの頻度見直し
- □ 定期購読物(新聞・雑誌)の見直し
- □ 会員サービス・団体費の見直し
- □ 業務委託内容の見直し
✅ 営業・販促関連
- □ 出張から Web 会議への切り替え
- □ 営業車両の最適化
- □ 販促物の必要性・数量見直し
- □ 展示会参加の効果検証
佐藤:確かにこれらは比較的すぐにできそうです。
でも、これだけで大きな効果が出るのでしょうか?
山田:一つ一つは小さくても、積み重なれば大きな効果になります。
特に固定費を下げることは、損益分岐点を下げることにつながり、会社の体質強化になります。
★専門家のワンポイント★
コスト削減で重要なのは「見える化」と「全員参加」です。各部門のコストを可視化し、削減目標を設定。そして、社員全員が「自分ごと」として取り組める環境づくりが効果を最大化します。小さな成功体験を積み重ねることで、コスト意識が根付いていきます。
📈 売上・入金の改善策
佐藤:支出を減らすだけでなく、入ってくるお金を増やすことも重要ですよね。
山田:その通りです。
資金繰り改善は「出」と「入」の両方からアプローチするのが効果的です。
では、売上と入金サイクルの改善策を見ていきましょう。
入金サイクル改善策
- 請求・回収プロセスの効率化
- 請求書の早期発行
- 入金確認の自動化
- 請求漏れ・遅延の防止
- 支払条件の見直し
- 前受金・中間金の設定
- 回収サイクルの短縮交渉
- 現金払いへの割引特典
- 与信管理の強化
- 新規取引先の与信チェック
- 既存取引先の定期的な見直し
- 与信限度額の設定
【用語解説】与信管理とは
取引先の信用状況を確認し、適切な取引条件や取引限度額を設定することです。取引先の経営状態や支払い履歴などから、代金回収のリスクを評価します。
佐藤:与信管理は正直あまりやってこなかったです。
どうやって取引先の信用状況を確認すればいいのでしょうか?
山田:帝国データバンクや東京商工リサーチなどの信用調査会社のサービスを利用する方法があります。
また、公開情報(決算書や登記情報)を確認したり、業界内での評判を聞いたりすることも有効です。
佐藤:なるほど。
売上を増やす方法についても教えていただけますか?
山田:短期的な売上増加策としては、以下のような方法があります。
短期的な売上増加策
- 既存顧客へのアプローチ
- 追加発注や新規案件の提案
- 過去の取引先への再アプローチ
- クロスセル・アップセルの提案
- 価格戦略の見直し
- 適正価格での販売(安売りの是正)
- 付加価値を高めた高単価商品の提案
- 数量割引などの柔軟な価格設定
- 在庫の現金化
- 滞留在庫の特価販売
- セット販売による在庫消化
- 別チャネルでの販売(EC等)
- 小口取引の拡大
- 少額でも即金性の高い取引の開拓
- 個人向け販売の検討
- 現金取引の拡大
佐藤:大口の取引先に依存していたのがリスクだったと感じています。
多様な販路を開拓することも必要ですね。
山田:そうですね。
特に資金繰りの面では、安定した小口の複数取引先があることは、リスク分散になります。
💡 売上・入金改善のミニチェック
✅ どの商品・サービスが最も利益率が高いか把握していますか?
✅ 滞留在庫の金額を把握していますか?
✅ 売掛金の回収期間を把握していますか?
✅ 入金サイクルを早める工夫をしていますか?
✅ 新規顧客の開拓と既存顧客の維持のバランスはとれていますか?
🛠️ 中長期的な財務体質強化策
佐藤:緊急対策を講じた後、再び同じ問題を繰り返さないためにはどうすればいいでしょうか?
山田:とても良い質問です。
危機を乗り越えた後も、持続可能な経営のために財務体質を強化することが重要です。
財務体質強化のための5つの柱
1️⃣ 資金繰り管理体制の構築
山田:まずは「見える化」と「予測」の仕組みづくりです。
- 週次・月次の資金繰り表の作成
- 3ヶ月先〜6ヶ月先の資金予測
- 資金繰りシミュレーションの実施(最悪のケースも想定)
- 資金繰り会議の定期開催
2️⃣ 財務バランスの最適化
山田:健全な財務構造を目指します。
- 自己資本比率の向上
- 借入金の返済計画の策定
- 運転資金の適正化
- 固定費と変動費のバランス見直し
3️⃣ 収益性の向上
山田:「薄利多売」から「適正利益の確保」への転換です。
- 粗利率の改善(原価管理の徹底)
- 不採算事業・商品の見直し
- 高付加価値サービスの開発
- 価格設定の見直し
4️⃣ 経営指標の活用
山田:数字で経営を「見える化」します。
- KPI(重要業績評価指標)の設定と管理
- 部門別採算管理
- キャッシュフロー計算書の活用
- 月次決算の早期化
5️⃣ リスク管理の強化
山田:想定外の事態に備えます。
- 複数の資金調達先の確保
- 取引先の分散
- 適正在庫の維持
- 事業継続計画(BCP)の策定
佐藤:なるほど。
でも、これら全てを一度に実施するのは難しそうです。
何から始めれば良いでしょうか?
山田:おっしゃる通り、優先順位をつけて段階的に進めることが大切です。
まずは資金繰り表の作成と週次での確認から始めてみましょう。
★専門家のワンポイント★
財務体質強化は「仕組み」と「習慣」が鍵です。例えば毎週月曜日に先週の実績と今週の見通しを30分でも確認する習慣をつけるだけでも、驚くほど資金管理の精度が上がります。まずは小さな一歩から始めて、継続することが重要です。
💼 専門家の支援を受ける方法
佐藤:自分たちだけで対応するのが難しい場合、どのような専門家に相談すればいいでしょうか?
山田:状況に応じて相談すべき専門家は異なります。
主な選択肢をご紹介します。
相談先の選び方
1️⃣ 金融機関の経営相談窓口
- 適している状況: 資金調達、返済条件の見直し
- メリット: 無料で相談可能、融資との連携がスムーズ
- 注意点: 銀行の立場からのアドバイスになる可能性がある
2️⃣ 中小企業診断士
- 適している状況: 経営全般の改善、事業計画策定
- メリット: 幅広い経営知識、実務的なアドバイス
- 費用目安: 個別相談は1時間5,000円〜15,000円程度
3️⃣ 公認会計士・税理士
- 適している状況: 財務改善、税務対策
- メリット: 財務・税務の専門知識
- 費用目安: 1時間10,000円〜30,000円程度
4️⃣ 弁護士
- 適している状況: 債務整理、法的整理の検討
- メリット: 法的手続きの専門知識
- 費用目安: 1時間10,000円〜50,000円程度
5️⃣ 公的支援機関
- 代表例: よろず支援拠点、商工会議所、中小企業基盤整備機構
- 適している状況: 初期相談、補助金・助成金情報収集
- メリット: 無料または低料金、幅広い支援メニュー
- 注意点: 担当者の専門性や相性による
佐藤:費用がかかるなら、自分たちでなんとかしようと思ってしまいます…。
山田:確かに費用は検討すべき要素ですが、専門家に相談することで得られるメリットも大きいです。
特に資金繰りの危機的状況では、早期の適切な対応が生死を分けることもあります。
★専門家のワンポイント★
公的支援機関を最初の相談窓口にするのがおすすめです。無料で相談でき、必要に応じて専門家を紹介してもらえます。特によろず支援拠点は、様々な分野の専門家がいるので、まずはそこに相談してみると良いでしょう。
🔄 資金繰り改善の行動計画
佐藤:色々とアドバイスをいただいて、何から手をつければいいのか整理できました。
具体的なステップとしてまとめていただけますか?
山田:もちろんです。
時間軸で整理すると次のようになります。
今日から始めること(24時間以内)
- 現状の手元資金を確認する
- 直近1ヶ月の入金・支払いスケジュールを整理する
- 最優先の支払い項目を特定する
- 緊急に交渉が必要な取引先をリストアップする
3日以内に行うこと
- 簡易的な資金繰り表を作成する
- 主要取引先との支払条件交渉を開始する
- 金融機関への相談の準備を整える
- 即効性のあるコスト削減策を実行する
1週間以内に行うこと
- 金融機関への相談を実施する
- 公的支援制度の活用を検討する
- 売掛金回収の促進策を実行する
- 在庫・遊休資産の現金化を検討する
1ヶ月以内に行うこと
- 3ヶ月先までの詳細な資金繰り計画を策定する
- 経費削減プロジェクトを本格化する
- 販売戦略の見直しを行う
- 必要に応じて専門家のサポートを受ける
佐藤:ありがとうございます。
こう整理していただくと、やるべきことが明確になりますね。
山田:一つずつ着実に進めていくことが大切です。
また、進捗を定期的に確認し、計画を柔軟に調整していきましょう。
❓ よくある質問と回答
佐藤:最後に、資金繰りについて他の経営者からよく聞かれる質問があれば教えてください。
山田:よくある質問とその回答をいくつかご紹介します。
Q: 資金繰り表はどのくらいの期間を作成すべきですか?
A: 最低でも3ヶ月先まで、理想的には6ヶ月〜1年先までの見通しを持つことが望ましいです。
ただし、遠い将来になるほど不確実性が高まるため、定期的な見直しが必要です。
まずは3ヶ月先までを週単位で詳細に作成し、それ以降は月単位で作成するとよいでしょう。
Q: 銀行との関係が悪化しています。どうすれば改善できますか?
A: 信頼回復には時間がかかりますが、①定期的な情報提供、②約束の厳守、③改善努力の見える化が重要です。
月次の経営状況報告や、改善計画の進捗報告を自主的に行うことで、少しずつ信頼関係を構築していきましょう。
必要に応じて第三者(顧問税理士など)に間に入ってもらうのも一つの方法です。
Q: 資金繰りが厳しい時、どの支払いを優先すべきですか?
A: 法的・社会的影響が大きいものから優先します。
税金・社会保険料、給与、電気・ガス・水道などのライフラインは最優先です。
次に主要取引先への支払いを優先し、返済条件の変更が比較的容易な金融機関への返済は交渉の余地があります。
ただし、個別の状況により判断が必要なケースもあります。
Q: 売上が急に落ち込んだ場合、資金繰りをどう乗り切ればよいですか?
A: まずは「出血を止める」ことを最優先に考えます。
固定費の見直し、不要不急の支出の停止、在庫の適正化などコスト面での対応を急ぎます。
同時に、既存顧客への追加提案や、短期的に現金化できるサービスの提供など、収入面での工夫も重要です。
また、資金調達の選択肢も並行して検討しましょう。
Q: 黒字なのに資金繰りが苦しいのはなぜですか?
A: 会計上の利益と現金の動きは異なるためです。
売掛金の回収が遅い、在庫が過剰、設備投資に資金を使いすぎている、借入金の返済負担が大きいなどの理由が考えられます。
「黒字倒産」を防ぐためには、損益計算書だけでなく、貸借対照表やキャッシュフロー計算書も重視する必要があります。
📋 まとめ:資金繰り改善の5つのポイント
佐藤:本日はたくさんのアドバイス、本当にありがとうございました。
明日から実行していきます!
山田:お役に立てて何よりです。
最後に、資金繰り改善の重要ポイントを5つにまとめておきましょう。
📍 Point 1: 「見える化」が第一歩
資金繰り表を作成し、現状と将来の見通しを明確にすることが全ての始まりです。
見えないものは管理できません。
📍 Point 2: 「入り」と「出」の両面対策
支出削減だけでなく、入金促進や売上増加策も同時に進めることで、効果が最大化します。
📍 Point 3: コミュニケーションが危機を救う
取引先、金融機関、従業員との誠実なコミュニケーションが、窮地を脱する鍵となります。
隠さず、逃げず、正直に伝えましょう。
📍 Point 4: 短期と中長期の視点を両立
目先の危機対応だけでなく、再発防止のための体質改善も同時に考えることが重要です。
📍 Point 5: 一人で抱え込まない
専門家や支援機関など、外部のサポートを適切に活用することで、より効果的な対策が打てます。
山田:資金繰りの改善は一朝一夕にはいきませんが、正しい方向に一歩ずつ進めば、必ず状況は好転します。
何かあればいつでもご相談ください。
佐藤:心強いです。
まずは資金繰り表から作成して、緊急対応から順に進めていきます。
本当にありがとうございました!